一週間ぶりに

休み明けの仕事はなんとなくダルく、重い。
それはきっと前日に妹夫婦の家の庭で行ったBBQで呑んだ酒の量が多かったせいだと、少し反省した。
酒が嫌いじゃない僕はどうも一度酒を飲み始めるとセーブして飲む事が出来ない。流石に倒れるまで飲むわけじゃないが、それでも40を過ぎて酒に弱くなってきた身体には充分過ぎる程のお酒を飲み干す。

そんな火曜日の夕方、彼女が会社へやってきた。彼女の仕事は保険外交員だ。勿論、出会いも自分の会社に定期的に訪問してくれたのがきっかけだ。
最初見た時、それ程印象には残らなかった。背が小さな子で可愛らしい声の子だなって思ったが、可愛い子なんてとても既婚者には見向きもしないだろうと、独身者が黙って見てるわけないだろうと思い、また、そもそも不倫するつもりも無かった自分は気にもとめてはいなかった。

それから数カ月、特に何も無く彼女と社内で定期的に世間話をするに留まっていた。

しかし身内でガンが見つかった事で、病気というものが、近く感じ、今入ってる保険の見直しをしたほうがいいのではないかという気持ちに変わった。
そして一番話をしていた彼女に相談してみることにした。

彼女は一生懸命僕に提案し、説明してくれた。
それが彼女の仕事と言えばそうなんだけど、
それがとても親身になって一緒に考えてくれた。
保険料が余り高くならないように、そして、ある程度充実した内容で、また焦らせることなく何度も細かく調整された提案書を幾度も作ってくれる。

最終的に子供の保険を含め夫婦の保険も彼女の提案を採用し、切り替える事になった。

一番の決め手は彼女のずっと寄り添っていきたいと言う精神だった。決めるまでが仕事じゃなく、入ってくれた家族をずっと見守っていきたいという気持ちが素晴らしいと思った。

そんな姿勢で仕事をしている彼女を尊敬するようになった。

馴れ初めについては又機会があれば記事にしようと思う。


一週間ぶりに彼女を見た、彼女は別の島の机に座っている後輩達と楽しそうに話をしていた。僕は時々そちらに顔をむけたが彼女から目線を合わせてくれる事は殆どなかった。

少し疲れたような顔だった。
やはり子供さんの事で疲労しているんだと直ぐに分かったがそんな顔をしている彼女に何て言葉を掛けて良いのか分からなかった。

結局僕も仕事が入り彼女と面と向かって話せるタイミングも無く今日の彼女の来訪は終了した。

帰宅の途中彼女に久々にラインをした。
疲れてるようだけど身体大丈夫?とのラインの後彼女から「大丈夫だよ」とだけ返事が来た。

何か出来ることがあれば何時でも言ってほしい旨と、夏バテに気を付けてねとラインを返したが既読は付けど返答は無かった。

ラインをすると、途端に不安になった。

彼女から何て言葉が返ってくるんだろうと思うと急に怖くなった。

もう少し待っていて欲しいという彼女の言葉を信じて待ってるけど、頭のどこかでこれは既に別れたがっているのに離れていかないから距離を置かれているだけじゃないのだろうかと、疑心暗鬼に駆られる。

僕の会社では仕事上元気に振る舞っているが家では悩み苦しんでいるんだと自分に言い聞かせる事にした。

会社でみた彼女の笑顔は全て他人に対してだけだったけど、それでも自分は、彼等とは違う特別な人であることに変わりはないんだ、だって待ってくれと言われているんだからと、自分に言い聞かせる。

ラインをやり取りした後はいつもこうだ。

彼女の情報が何も無かった時の方がもっと安心した気持ちの中で彼女を想う日々を送っていたのに、会社の中で遠くに聞こえる彼女の笑った声が、ずっと待っている僕の心をきゅーっと搾られたような苦しい気持ちになった。

僕が彼女を笑顔にしてあげたかったのに。